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「デザインの部屋」
Harri Koskinen×Max Fraser×岡田栄造・レポート

 

 

 スフェラ・アーカイヴにて不定期に行っているデザイン・ミニシンポジウム「デザインの部屋」。

 今回はフィンランドからプロダクト・デザイナーのハッリ・コスキネン氏、イギリスからデザイン・ジャーナリスト、キュレーターのマックス・フレイザー氏をお迎えした特別版。ホスト役はデザイン情報サイトdezain.net主宰の岡田栄造氏。デザインの部屋では初めての海外からのお客様ということで、同時通訳付きでの進行となりました。

 岡田氏に依頼したテーマはズバリ「デザインとジャーナリズム」。シンプルな中にどこかヒューマンな手触りを残すコスキネン氏と、いま最も注目される新進気鋭のデザイン・ジャーナリストのフレイザー氏との対話も見逃せないところ。フレンドリーな語り口ながらも、ジャーナリズムの重要性と恐ろしさにまで踏み込んだ対話に、会場も興味津々の様子でした。

 

fig1.ハッリ・コスキネン氏(左)とマックス・フレイザー氏(右)
fig2.続々と会場入りするギャラリーの皆さん
fig3.中央は同時通訳のアンドリュー氏

20:15〜ハッリ・コスキネン氏プレゼンテーション

学生時代にデザインしたブロックランプで注目され、一躍スターダムを駆け上ったコスキネン氏。彼を一躍スターダムに押し上げたブロックランプやイッセイミヤケのウォッチから、ウォッカのボトルのデザインまで、主要作品を網羅した美しいプレゼンテーションに会場もうっとり。いま注目の「ネクストマルニプロジェクト」の椅子の紹介も!

fig4.コスキネン氏のプレゼンテーション

20:45〜マックス・フレイザー氏プレゼンテーション

11月初旬の東京滞在中に撮影した画像を流しながら、デビュー秘話を語りはじめたフレーザー氏。パーティでのシャンパン配りのバイト中に知り合った出版社の社長に、最初の著作のアイディアを語り、見事仕事をGET!! その後、デザインを学ぶ為に入学した大学を「デザイナーになりたいわけではない」と気づいて3ヶ月でドロップアウト。これを「もっとも重要な決断だった」と断言する彼は、ジャーナリストとして大成功を収めつつあります。


fig5.熱気に満ちた会場

21:30〜岡田栄造氏とゲストの対話

 

-メディアの役割についてどうお考えですか?

 

マックス・フレイザー(MF):メディアはとても大切なものだけど、怖いもの。デザイナーに人気があるときには持ち上げ、なくなるとすぐに扱わなくなってしまいます。メディアのもつパワーも危険で、メディアの意見でデザインが変わってしまうことさえあります。とくに会場の学生さんに言いたいんですが、メディアを見る見方に注意してほしい。雑誌やメディアであるデザインがとても綺麗な写真で紹介されていたとしても、デザイナーがどうやってそのデザインにたどり着いたのか?という長いストーリーが省略されがちですから。

それに、私の知るデザイナーは、若い頃どんなにメディアに露出しても収入になるわけじゃないって言ってます。お金になる場合もあるけど、たいていは5年ぐらい経たないとお金になりません。ハッリさん、そうだよね?

ハッリ・コスキネン(HK): ・・・だね(笑)私は幸運にもたくさんの雑誌に載りました。最後に重要なのはメディアですね。AXISに載ったおかげでイッセイミヤケと仕事できたわけですし。

 

-デザイン雑誌を読みますか?

 

HF: 読むというか、見ています。

MF: もちろん読んでます。世界中の情報を知るためには雑誌を読まなきゃいけません。最近はインターネットも利用できますが、ネットと雑誌は役割が異なりますね。インターネットはインフォメーションツールとしては大いに役立っていますが、どこにいても情報が手に入るというのは、ナショナル・アイデンティティがあいまいになるというマイナスもあります。

-ハッリさんはデザイン雑誌を読まないということですが、自分の作品をしっかり言葉で説明してほしいという思いはありませんか?

 

HK: ぼくは雑誌に載るときには、必ず記事をチェックします。

MF: 本当?それはハッリさんにとっては良いことだけど、その雑誌はプロフェッショナルな仕事をしてないね。ジャーナリストは自信をもって自分の記事を書くべきだよ。

HK: インタビューのときの発言は必ずチェックするよ。

 

fig6.フレイザー氏のプレゼンテーション
fig7.東京滞在中のスライドを見ながらプレゼンテーションが進む
fig8.休憩中もギャラリーからの質問に答えるフレイザー氏
fig9.自著にサインをするフレイザー氏(SferaArchiveでも取扱っています)

-先週東京でデザインイベント(Design Tide, 東京デザイナーズウィーク)がありましたが、どんな印象でしたか?みんな良いことしか言わないから・・・ここでは悪い点をぜひ(笑)

 

MF: icon誌に頼まれたのは、世界中で一年間に行なわれるデザインイベントの中で、最も優れたものはどれか?という記事。イベントでのパーティと、展示のクオリティについて☆をつけていく記事なんだけど、もちろん、パーティにしても展示クオリティにしても、ミラノが最も優れたイベントだったね。東京はパーティはよかったけど・・いままでヨーロッパで見てきたデザイナーの作品が多かったのが残念でしたね。それよりも日本人の若手デザイナーの作品が見たかったな。でもパンフレットがしっかりしてて、デザイナーを見つけやすかったのは良かった。

ヨーロッパと違って、最近の日本ではインテリアをおもしろく取り入れてるよね。昔の日本はそれほど家具に囲まれてなかっただろうから、新鮮でした。今は機能よりもスタイルを大切にしているように感じたけど、逆に機能を大切にしているデザインもあるね。伝統的なスタイルを現代的にアレンジしてるから、たとえヨーロッパで見つけたとしても日本人のデザインだってわからないものも多いかも。

HK: 今回の滞在では、過去4回の来日とは異なって、全部自分でアレンジして来ました。道に迷ってしまったり・・(笑)。でも地図なしで駅を降りて、その町をぶらぶら歩くのがおもしろかったですね。今回で5回目なので、日本に対する知識も深まりました。

 

-なぜ日本の企業があなたのデザインに興味をもつんだと思いますか?

 

HK: いい質問ですね(苦笑)日本のデザインとスカンジナビアのデザインには共通点があって、繊細なところが似ているからなんじゃないでしょうか。

会場からの質問

 

-これから取り組みたいお仕事を教えてください

 

HK: やりたいことはいろいろありますけど、いま取り組んでいる仕事で精一杯ですね。毎朝飛び込んでくるEメールでその日の仕事が決まったりしますから。

 

-どんなときにクリエイティブなアイディアが?

 

HK: 睡眠と仕事しているときの時間のバランスは大事ですね。スポーツをして気分転換をして、頭の回転をよくしてます。

MF: だいたい夜10:00ごろから1:00ごろにかけて書いてます。たいていワインを一杯飲みながら、一気に書き上げます。それを朝起きたときに読み返すようにしています。でもいちばんインスピレーションが沸くのは実は飛行機の中なんです。地上から飛びあがって、自由に羽を伸ばせてるのかも。地上を見ながらビール片手にぼんやり考えるのが好きですね。

 

fig10.会場からの質問に答えるフレイザー氏
fig11.会場からの質問に答えるコスキネン氏

最後にひとこと

MF: デザイナーの方にお伝えしたいのは、ぜひ自分のデザインに自信を持ってほしいということです。同時に、自分の作ったものにインスパイアされることも大切です。不必要なものが増えすぎた世の中で作っていくわけですから、デザイナーには大きな責任があります。自分の制作するものが社会にどう関わってくるのか考えなければなりません。機能も大事ですが、美しいものも、フレッシュなアイディアも大事です。
ぼくはたまに、自分が記事を書いた雑誌が何千部も出ていることに罪悪感も覚えますが、ぼくが書いた記事にインスパイアされる人がいてくれればうれしいし、それが自分の役割だと思ってます。


22:30閉会

<会場からいただいたご意見・ご感想>

1.デザインの学生ではないのですが(建築なのですが)デザイン言語って本当にシンプルで、人間的で、衝動的で、すごく透き通っている反面、そこからが難しいんだろうなあ、と感じました。で、基本的にこうやってワイワイしてることが何かにいろんなレベルで還元できていけそうで、良いなあと、良い会だな、と思いました。(24歳女性、学生)

2.ジャーナリストの方の話が聞けたのが新鮮で面白かったです。食べものとかカトラリーやっている方の話がいつか聞きたいです。(24歳女性、UIデザイナ)

3.生っぽくてとても良かったです。(35歳男性、インダストリアルデザイナー)

4.とても素敵な時間・空間でした。通訳の方も楽しくて、リラックスできました。(女性)

5.映像が楽しかったです。(35歳女性)

7.いい刺激になりました。ありがとうございました。(27歳男性、Webディレクター・AD)

8.芸術とPRメディアの関係を聞けてよかったです。特に、インターネットの良さが注目を浴びているなか、Webメディアの悪い点について批評を聞けたことが今日の大きな収穫です。(男性)

9.初めて参加させて頂きました。建築を学んでいますが、デザインにも興味があり大変面白かったです。(25歳男性、学生)

10.質疑やプレゼンなど充実して楽しかったです。(23歳男性、学生)

11.著名なお二人のお話を直接聞くことができ非常に嬉しく思います。何より感じたことは、お二人が(岡田さんと通訳さんもですが)人生をとても楽しんでいるなということです。つくることに携わる者は、いつまでもそうでなければいけないなと改めて感じました。(24歳女性、学生)

12.現在大学へ通いながら専門学校へ通っているものですが、二人のお話を聞いていろいろな面で考える幅が広がりました。(20歳男性、学生)

13.DesignerではなくCuratorとJournalistの話というのがよかったです。貴重な機会でした。(24歳男性、学生)

14.これからも刺激のある企画をやって欲しい。(男性)


開場前からたくさんの方にご来場いただき、熱気に包まれたシンポジウムになりました。ご来場いただいた皆さま、コスキネンさん、フレイザーさん、岡田さん、本当にありがとうございました。「デザインの部屋」は、いま最も旬なデザイナーとの対話の場として、今後も継続する予定です。次回の「デザインの部屋」をどうぞお楽しみに!

□イベント概要

名 称

デザインの部屋 Harri Koskinen×Max Fraser×岡田栄造

カ ナ

デザインノヘヤ ハッリ・コスキネン マックス・フレイザー オカダエイゾウ

会 場

Sfera Archive(スフェラ・アーカイヴ)

日時

2005年11月7日(月) 20:00〜22:30

入場者

43人

入場料

800円

主 催

Ricordi & Sfera